身体に聴く


 

僧院などでは日々行う物事の区切りに太鼓や鐘を打ち鳴らすことが一般的です。それにはいくつかの理由があって、遠くからも聞こえることや、言葉による伝令よりも音の方が身体が素直に反応するからなのだそうです。言葉を聞くと思考や感情がはたらき、反応が鈍ることがあるからでしょうか。

習い事をするときには同じ動作を繰り返し練習して、身体に浸み込むように覚えさせることをしますが、頭を使わずに身体で物事を理解することには何か秘密がありそうです。

武道などをはじめ様々な芸道の中で、作法などを一度身体が覚えるとそれがそのまま自然の理にかなっていることが分かります。身体にはこの法を学ぶ智慧が備わっているようです。

 

 

 

 

 

 

心を洗う


 

洗濯物をたたむほどのことに人生はあるか、と詩人山尾三省は問いました。生きるために必要な、日常のどのような小さなことも人生をつくりあげています。毎日の暮らしのなかの一つひとつのことを丁寧に行なうことは、何よりも大切なことであると思います。

掃除、洗濯、そして心を見つめ、心を洗う。どんなに小さなことにも心をこめる。その積み重ねがその人の人生を作っていくのではないでしょうか。

詩人は、自分の人生が一枚一枚たたまれていくと詩(うた)いました。

照顧脚下


 

日々加速する時間の流れ、情報の洪水。自然環境の汚染。気候の変動。このまま進んでは危ないと感じている人は多いのではないでしょうか。

耳を澄ませて地球の声をよく聴き、立ち止まって自分の足元を確かめる必要があるのではないかと思うこの頃です。

 

 

 

 

前へ


 

草木が一斉に芽吹く春は、卒業、進学など新しい船出をするのに相応しい季節です。

「月日は百代の過客にして、行きかふ年もまた旅人なり」といわれるように、誰もが人生という旅を続けているのではないかと思います。

 

旅をするすべての人にエールを送ります。不条理な出来事に出遭い、行く手を塞がれているように思うことがあっても、その壁を乗り越えて前に進んでいくことができるように、応援したいと思います。

 

 

 

 

 

 

その時


 

雪のなかで人知れず花を開く。自然は、誰に見られようと見られまいとその時期になれば花開き、そして黙って去っていく…

自然は偉大な教師でもあります。そのような姿に接すると、ただその時の仕事に集中し、一つになって生きるという大切さを教えてくれているように思います。

 

 

 

 

全身全霊で

 

 

横山大観の制作にまつわるエピソードの中で特に印象に残る話があります。

第一回帝展に出品された六曲一双の龍を描いた屏風を制作する際に、屏風の一折を1枚と数えて、完成までに90枚を書き直したという話です。大観はこの展覧会には特別な思いを持っていたのでしょうか、一切の妥協を許さなかった姿勢が伺えます。

偉大な先人に倣い、作品にはどのような小さな仕事でも常に全身全霊で心血を注ぐという心構えで臨みたいと思います。

 

 

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