透明になる

 

古い絵を復元するために模写をすることがあります。描かれた当初の姿を再現するのです。絵具が剥がれ落ちて見えなくなっているところは、集めた資料から類推したり、想像力を使って描きます。

模写をするときに大切なことは、自分の個性を表に出さないようにすることでしょうか。できる限り作者に近づいて、作者になりきって描くことができれば、よい仕事ができます。

 

自分を捨て、無色透明になること。その昔、仏画を描いた僧侶やイコンをひたすら模写し続けた修道士は、描くことで自我を消していく修行をしていたのではないかと思います。