聖山に祈る(6)


 

 

巡礼者の訪れる大きな修道院は設備も近代的に整えられています。連絡をする時は電子メールが使えますし、部屋には暖房の設備があり、トイレも水洗でお湯のシャワーもあります。それでも世俗社会から遠く離れ、聖域として静けさが守られています。

祈りは、どこにいてもできるのではないかと言われますが、よりふさわしい場所というものがあることは確かです。その場所には長い間に醸成された、祈るための磁場が作られているのではないかと思います。

 

 

聖山に祈る(5)

 

 

日本人は珍しいせいか、巡礼の人たちや修道士の方々からもよく声をかけられました。話を聞くと、巡礼者もいろいろな国から来ていることがわかります。

修道士もまた出身がさまざまです。ブルガリア、フランス、中国、そして日本。夕食後、就寝までのわずかな時間ですが、巡礼者は修道の方ともお茶を飲みながら歓談することができます。

修道士の方々には歓迎され、とてもよい時間を過ごすことができました。忘れられない巡礼の思い出です。

 

 

聖山に祈る(4)

 

 

祈り

修道院では毎日夜明け前に3時間、夕方に2時間祈りの儀式(奉神礼)が聖堂で行われています。

蝋燭とオイルランプの灯りによって金地のイコンが照らされる中で聖句と聖歌が交互に詠まれ、鈴の音のする香炉の煙によって堂内が清められます。無伴奏(アカペラ)で歌われる聖歌は中東の旋律に似て、とても神秘的に聞こえてきます。

聖堂は特別なエネルギーに包まれていて、宗教の枠を超えた荘厳な空気を体感することができました。

 

 

聖山に祈る(3)

 

 

朝夕の祈りの時間に続き、修道士と巡礼者はともにトラペザと呼ばれる食堂で食事をします。修道院の畑で収穫された野菜や果物を中心にワインなども添えられます。

食事の時間には係の修道士が聖句を朗読します。聖句は魂の栄養になります。

 

 

聖山に祈る(2)

 

 

聖母の園

伝説によると、聖母マリアはキプロスに住んでいた伝道者ラザロの「死ぬ前に一度会いたい」という求めに応じて、エルサレムから船出をしましたが、エーゲ海に出たところで嵐に遭遇し、漂着した所がアトス半島でした。

その時、<この地を御身の園そして楽園に。救いをもとめる者たちの港とされよ>と主イエスの声を聞き、上陸されたといいます。

ギリシア東北部にあるアトス半島は、共和国内にありながら正教会の修道院による自治が認められていて、この領域に「入国」するためには許可書が必要です。訪問することができるのは男性に限られ、舟に乗って「入山」します。そして許可された滞在期間に各々の巡礼のための時間を過ごします。

ここには深い静寂があるといわれます。祈りと観想によって神の光につつまれ、神と一つになろうとする静寂主義(ヘシュカスム)の伝統が今も息づいています。

 

 

聖山に祈る

 

 

巡礼のためにギリシャを訪ねました。聖山アトスをいただく半島には大小の修道院が点在しています。

巡礼者はそこに宿を借り、修道士とともに祈りの儀式に加わります。そしてその中で授かった恵みをそれぞれの国に持ち帰り、皆と分かち合うのです。

この聖域では1000年もの間変わることなく、この営みが続けられてきました。